のんびり世界を眺めて

31歳で希少がんステージ4が発覚した病弱だけど楽天家な妻と、仏様のように優しいサラリーマン夫の日常

私たち夫婦について②婚約継続は許されるのか

クリニックから家に帰る途中、色々なことが頭を巡った。

 

もっと早く病院に行っていたらとか、あの時のアレがどうとか、なにやらかんやら。

 

「胸に10cm大の腫瘍があります。良性悪性問わず、心臓の上、気道を圧迫していることから手術は必須です」

 

10cmって、なんだ。半年前の健康診断では何も指摘されていなかったのに。そんな急成長するものなのか。私は幸せに結婚しちゃいけないのか。何かすごく悪いことをしたのだろうか。

 

家に帰っても何も手につかなかった。入籍に先だって同棲を開始して一ヶ月。彼が仕事から帰ってくる。ご飯の用意をせめてしなくちゃ。

 

何とか、料理をして、落ち着くように心がけて、彼の帰宅を静かに待った。飼い猫2匹が足元で鳴いている。

 

「ただいま〜」

 

いつも通り。いつも通りの声と日常。

けど、涙が勝手にあふれてくる。

 

「ごめんなさい。どうしたらいいかわからないけど、結婚できないかもしれない」

 

「どうした、どうした?大丈夫だから」

 

いつだって、優しい人。私は彼以上に優しい人に出会ったことがない。抱えきれない不安をその日のうちに彼に全力で投げつけてしまったこの時も、彼はしっかりと優しく受け止めてくれた。

 

「大丈夫、そんなことで離れたりしない。一人にさせるわけがない。一緒に乗り越えよう」

 

私には彼がいてくれた。痛みと不安で潰れかけていた心をしっかりと支えてくれる。一人でないことに心から感謝した。

 

翌日は精密検査。結果は一週間後に聞くことになる。

 

つづく